「いろとりどりの親子」監督が語るベストセラー本の映画化
「撮影や編集技術はもちろんのこと、ドキュメンタリーを手掛ける上で最重要ともいえる“出資を募る”ノウハウがあることも評価されたのだと思う。加えて、私がアンドリューに伝えたのは、原作を模倣するような撮り方はしないということ。原作は800ページもの分厚さで、取材対象は300件以上と多岐にわたる。対する映画は90分と尺が限られるので、原作の本質や魂を表現するには、映像ならではのアプローチが不可欠になると考えた。それを理解し共感してくれたんじゃないかしら」
それでは映像の強みとは何なのか。
「誰かをちらりと見たり、そうっと目線を送るだけでも、20ページ分ぐらいを表現できたりする。それこそが強みです。ただ、カメラの前で話す行為は、自分の内面をもさらけ出すこと。当初は大丈夫、平気、と言っていても、いざ本番になるとガチガチに意識してしまう人もいる。そういった万が一も見越しながら作業を進めることはとても難しかったですね」
何度も自宅に通い、ときにはカメラ1台で、録音技師も同行しない少人数のクルーで、取材班の存在を忘れてしまうような空間づくりを行ったという。「互いに愛情が持てる関係が築けたことは成功の秘訣だった」と振り返る。