「シルク・ドゥ・ソレイユ」破産…エンタメ業界の試行錯誤
「送り手を守ると同時に自分を守ることになる」
一方、「新しい生活様式」に応じて、感染対策を徹底した上での公演や「リモート配信」なども増えている。
歌手の加藤登紀子さんは28日、約3カ月ぶりとなるコンサートを渋谷のBunkamuraオーチャードホールで決行。収容人数2150人の会場で、客席を990人に制限。ソーシャルディスタンスを確保し、検温、マスク着用、手指の消毒など感染対策を徹底した上での開催となった。3月から上演を中止していた歌舞伎も、8月1~26日に、東京・歌舞伎座が「八月花形歌舞伎」で5カ月ぶりに公演を再開すると発表。座席数を半分以下に絞り、4部制で、1時間程度の1演目を上演するという。
また、人気バンドのサザンオールスターズは25日、「無観客ライブ」を有料でリモート配信した。3600円のチケット購入者は18万人に及んだという。
コロナ禍で困窮極まるエンタメ業界は、ニューノーマル時代の興行のあり方を模索中だ。しかしマネタイズがどこまで成功するかはどれも未知数。それでも文化や芸術を絶やさないため、“赤字覚悟”で挑む例も多いという。メディア文化評論家の碓井広義氏はこう話す。
「確かに文化というものは、不要不急で“なくはない”という側面があるかも知れません。しかしながら、コロナに限らず、いろいろな意味で閉塞感に包まれている世の中では、精神的な部分、つまり心を支える文化というものは、平時より重要になってくると思います」
■「送り手を守ると同時に自分を守ることにも」
さらに碓井氏は、甚大な経済的損失を被りながら、存続のために試行錯誤を続けるライブ・エンタメ業界を守ることの大切さを説く。
「本当に大変だと思います。しかし、そこに行った人たちにとっては、ある種の救いになっているわけです。文化を受け取る側も、文化を発信する側の取り組みに、より積極的に参加し、できる範囲で共に文化を守っていくという“協働作業”の意識を持つことも大切だと思います。それは送り手を守ると同時に自分を守ることにもつながるんです」
“第2波”の襲来が懸念される中、エンタメ業界の挑戦は続く。