著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

映画賞はNO眼中?「今日から俺は!!劇場版」白々しさが潔い

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 監督は画面に大量のしらけ鳥を飛ばして飽きない。しらけ鳥があまりに多いと何か意図があるのではないかと探りたくなるが、何もないのだ。それが福田ワールドである。

 もちろん、ツボにはまった笑えるシーンも多いのだが、そのなかにいわばお約束の外した笑いが散りばめられていることで、ごった煮的な異様なエネルギーを持った作品に仕上がっているというべきか。激しい暴力が充満していたかつての“まっとうな”ツッパリ映画に郷愁を感じる向きには勧められないが、コロナ禍のただ中、この練りに練られた作劇術を持つツッパリ・コメディー映画に、爽快感を抱くのは筆者だけではないだろう。そうでなければ、ここまでの大ヒットはおぼつかない。

 主演の賀来賢人(見直した)、伊藤健太郎(突き上げた髪と普通に下した髪のギャップがいい)はじめ、俳優陣の演技が見事だ。なかでも柳楽優弥が別格である。福田ワールドに安易に染まることなく、ムロツヨシと似た感じだが全く違った長髪姿に、不穏な空気感がへばりついていた。福田監督は柳楽の演技にかつてのツッパリ映画の荒々しい余韻を残そうとしたのかもしれない。

 あとに何も残らない映画とはいわせない。どっしりといろいろなことが頭をよぎってくる。まさに「潔作」である。

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