群馬の「暴威」は手の付けられない不良だった
少し時間を置いて彼らと会うことになった。
ギラついた目の切れ味鋭いカミソリみたいな連中だった。ボーカルの氷室京介、ギターの布袋寅泰と諸星アツシ、ベースの松井恒松、ドラムの木村マモル、サックスの深沢和明。最初は6人編成のバンドだった。後にギターの諸星、サックスの深沢が脱退。ドラムが高橋まことにチェンジする。
新宿ロフトでは土曜に「新人バンド公開オーディション」を設けており、何組かのバンドと一緒に暴威をブッキングした。リハーサル時間が押したことに待機中の氷室が、いきなりテーブルを叩きながら「遅っせぇ~なぁ! どうなってんだよ!」と大声で怒鳴り出した。店長が「もう少し待ってくれないか」と言うと「誰だ! てめぇ~は!」と毒づく始末。
まだ無名の新人バンドが、ロック小僧の聖地である新宿ロフトの店長にケンカを売るとは、度胸がいいにも程がある。
長戸さんに「何とかしましょう」と約束した手前、放り出すわけにもいかず、その後も手を焼かされたものである。
データを確認すると81年5月11日(月)に暴威は、新宿ロフトで初のライブをやっているが、客は男性9人に女性4人の計13人だけ。寂しいデビューライブだった。
82年1月、バンド名を「BOØWY」に改名して3月、ビクターからデビューアルバム「MORAL」をリリース。常に「解散」の噂が絶えないバンドだった。(この項つづく)