ビリー・バンバン菅原進さんと愛猫との出会い「引っかかれで一緒に暮らす覚悟ができた」
「白いブランコ」「また君に恋してる」など多くのヒット曲で知られる菅原孝さんと進さんの兄弟デュオ「ビリー・バンバン」。8年前、兄弟が同時期に大病を経験したが、今も活躍中。4日に公開された「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」の挿入歌「ココロありがとう」を歌っている。弟・進さんにとっての大きな出来事は病気の前、今も5匹飼っている、猫との出合い……。
◇ ◇ ◇
やはり僕にとっての大事件は8年前、2014年に大腸がんが発見されたことです。ステージ3。宣告を受けた時は「俺の命もこれまでか」と肩を落としました。僕にとってはあれが「その瞬間」かもしれません。
でも、大病する前もその後の僕の人生も豊かにしてくれたのは猫だと思います。今、5匹飼っています。
猫は子供のころから好きでした。うちにはファニーとキューディという猫がいました。昔だから外飼いです。人懐こかったのはファニーです。家には私道部分があって、母が買い物に出かけると私道の一番端っこで、帰ってくるのをずっと待っているんです。それがかわいらしくて。あの姿が忘れられなくて、僕もいつか猫を飼いたいと思っていました。
右手の親指と人さし指の間を今も残る
13年前、09年夏のことです。当時の家はマンションの1階でした。結婚したばかりのころです。そのマンションは隣の家がちょっと高いところにあって、すぐ庭になっていました。うちのベランダの物置からだとひょいと庭に移ることができるような造りです。後からわかったのですが、その家は二十数匹の猫を飼っていて、ベランダから物置、庭へは猫の道になっていたんです。
庭には母猫と子猫たちも4、5匹すんでいました。そのうちの2匹が11年ごろ、僕の家に入るようになりましてね。チョコという名前の一匹はエイズを発症したので、別の部屋に隔離しながら飼うようにして。でも、もう一匹のマーブルはひとりなので朝まで鳴いて寂しがるんです。それで保護猫のミントをもらいました。
12年に一戸建てに引っ越すことになり、ボランティアの方に保護をお願いしました。外にはマーブルと同じ時に生まれた白子という雄猫がいたので、この子も一緒にと思ったけど、警戒心が強くて保護できない。それで引っ越す前、嵐の夜、マンションの軒下に来た時に開けた窓から部屋に入ってきたので、窓を閉めて格闘して保護しました。
その時です。野良だから右手の親指と人さし指の間を思いっきり引っかかれたんです。傷が深くてざっくり。ドバッと血も出ました。もちろん痛かったですよ。でも、かわいいし、どんなことをしても飼ってあげようと決めました。僕にとっては白子ちゃんに引っかかれた瞬間、猫と暮らす覚悟ができた。
結局、4匹引き取りました。猫と暮らす僕の新しい人生はその時に始まったようなものです。傷は10年経った今も残っています。
白子ちゃんが脱走した時のショックといったら
引っ越して1年でチョコが死に、大腸がんを患ったのは14年5月。引っ越して2年くらいしてからです。入院中も3匹の猫たちのことは気になって仕方がなかったですね。猫のいない人生は考えられません。
そして退院して夏に、保護猫団体の知り合いから1匹譲り受けるつもりだったけど、姉妹なので2匹飼うことになって。それがあずきときなこで、5匹の猫に囲まれているというわけです。猫って飼っているともっと欲しくなるんですよ。
いいですよ、猫は。どこの家でも夫婦喧嘩をするでしょ。そんな時に猫はショックアブソーバーになるんです。ショックを和らげてくれる。怒っていても怒りがスッと消える。だから、夫婦円満です。
白子ちゃんが脱走した時はショックでしたね。前のマンションの隣の家の人が今の家に遊びに来た時に、たまたま2階の窓が開いていてビューッと出ちゃった。毎日捜し回ったけど、どこにもいない。もう心配で、心配で。あの時は猫探偵を頼みました。家から歩いて1、2分のところに遊歩道があって、白子ちゃんはその近くのお宅にいました。うちの奥さんがやっているピアノ教室の生徒さんが見つけてくれて。すぐ猫探偵さんに連絡、唐揚げのにおいがいいというので、大きなケージの中に入れて誘い、捕獲してくれました。僕にとっては大事件です。
猫つながりで「映画ドラえもん」の挿入歌「ココロありがとう」
今は猫の曲を作りたいと思っています。お酒を飲んだ時にギターを弾きながら、やっているけど……。
4日に公開される「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」では挿入歌の「ココロありがとう」を歌っています。ドラえもんが猫型ロボットなので、猫つながりということでとてもうれしいお仕事になりました。
ちなみに、兄の孝は犬好きです。奥さんが好きで、大きなシェパードとか一時は5匹くらい飼っていました。僕ら兄弟は猫派と犬派ですね。
(取材・文=峯田淳/日刊ゲンダイ)
▽ビリー・バンバン 兄弟デュオ。兄・孝(写真右)は1944年8月、弟・進(同左)は47年9月生まれ、東京都国立市出身。「白いブランコ」「さよなら涙」「さよならをするために」「また君に恋してる」などヒット曲多数。孝は2014年に脳出血を、進は同年大腸がんを患った。