「裸のムラ」五百旗頭監督があぶり出す“家父長制”というこの国の宿痾
岸田首相が長男を首相秘書官に起用した。この国に根付く「家」を痛感させる出来事である。
「官邸内の人事活性化と岸田事務所との連携強化」が目的というが、うのみにする有権者ばかりでないことは首相も重々承知のはず。低支持率にあえぐ現在、最も信頼のおける存在が長男だとしても、公私混同のそしりは免れない。
岸・安倍家をはじめ、古い家制度にのっとるように政治家一族の世襲と利権占有は続いてきたし、終わる気配もない。明治憲法下の家制度は1947年に解体されたとはいえ、そのイズムは依然として政界そして国全体を縛りつけている。
北陸に居を構え、かの地の事情を微細に描くことでこの国全体を覆いつくす理不尽をも映しだす異能のテレビマンがいる。五百旗頭(いおきべ)幸男監督だ。現在44歳。
2020年の映画「はりぼて」で富山市議会の不正を暴き、政治ドキュメンタリーの新たな旗手として注目を集めた彼が、富山のチューリップテレビから石川テレビに移籍して撮った「裸のムラ」は、「家」つまり家父長制(父権主義)のありようをとらえた意欲作である。