杉真理さん「あの時は緊張しました」 大滝詠一さんとスタジオで初共演した思い出のショット

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佐野元春と3人でやったヘッドホンコンサート

 変化球といえば、81年12月に、大滝さんは渋谷公会堂でヘッドホンコンサートというのをやりました。お客さんはウォークマンから流れる曲をヘッドホンで聴く画期的なコンサートです。スピーカーはなし。演奏した音を館内のFM電波で飛ばし、客席でそれを受信して聴く。生音で聴こえてくるのは大滝さんのアコースティックギターだけ、まるでスタジオライブです。大滝さんが何かボソボソ言うと、みんなでガーッと笑うっていう面白いコンサートでしたね。

 そこで僕と佐野君が紹介され、最初で最後、一度きりの「A面で恋をして」を大滝さんと3人でやりました。あの伝説のコンサートは今も忘れられませんね。

 大滝さん流のレコーディングのやり方も有名でした。生ギターが5、6人、ピアノ4、5人、パーカッションも何人か集める。譜面はなし。ざっくりしたコードだけで全員で一斉にやる。つまりダビングして重ねるのではなく、それぞれのちょっとの違いが厚みのある音をつくり、それが大きなサウンドになるのを大切にする。だから、大滝さんがレコーディングをやると、有名なミュージシャンがみんな集まっちゃって他でレコーディングやコンサートができなくなっちゃったとか。お金もかかるし、いつも常識外れなことをやっていましたね。

 去年5月に出した「魔法を信じるかい ミスターメロディ・杉真理の全軌跡」(DU BOOKS)にも掲載しましたが、「vol.2」の収録後、ご褒美で取材陣や番組関係者と一緒にハワイに行きました。その時、大滝さんと僕と佐野君の3人で撮った写真もあります。大滝さんが送ってきてくれたものです。

 ハワイでは面白いエピソードもあります。僕ら3人はタイプがまったく違って、大滝さんは出無精、佐野君は早寝早起き、一番不健康なのが僕で毎晩、仲間と飲みに行きました。初日のマウイ島では、僕は佐野君と一緒のツインの部屋でした。夜遅くに部屋に戻って、寝ている佐野君のベッドの足元を通り過ぎようとしたら、佐野くんが毛布を蹴りながら、「ロックンロール!」と寝言を言ったんです(笑)。この人、本当にロッカーなんだなって思いましたね(笑)。

 大滝さんが亡くなった時(2013年)は当然ですが、本当にびっくりしました。お正月は毎年、大勢のミュージシャンと一緒に「杉まつり」というライブをやっています。伊藤銀次さんと次のお正月は大滝さんを呼んで「君は天然色」をやろうなんて話をしていた最中だったんです。

 亡くなったのは12月30日。だから年明けのコンサートは追悼みたいになっちゃった。やるのをやめようかという声もあったけど、銀次さんは「反対に歌いましょう」と。若い人たちが泣きながら歌っているのを見て、大滝さんのまいた種は着実に育ってるんだなと感動しました。

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