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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

孤独のグルメ特別編「それぞれの孤独のグルメ」は淡い一期一会が心地いい

公開日: 更新日:

 ドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京系)がスタートしたのは2012年だ。12年前だから干支も一回りしたことになる。今期は「それぞれの孤独のグルメ」と題した特別編を放送中だ。

 趣向はシンプル。たまたま主人公の井之頭五郎(松重豊)と同じ店で食事をする、さまざまな職業の人物たちの「独り飯」を見せていくのだ。ただし、ここが大事なところだが、彼らと五郎がからむわけではない。いや、あえてからませない。それぞれに食べ、それぞれに味わい、食後はそれぞれの世界に戻っていく。この淡い一期一会が心地よい。

 印象に残った回がいくつかある。東京・神保町の焼き肉店に入ったのは、看護師の板谷由夏だ。救命救急センターでの夜勤を終えた彼女を、「上タン塩」と「ゲタカルビ」が優しくねぎらう。

 また客室乗務員の比嘉愛未は、空港スタンバイの終了間際に出雲行きが決まってしまう。フライトを終え、出雲市にある店で選んだのは餃子と白飯。特に「しそ餃子」との出会いが感動的だ。

 さらに、千葉県香取市のドライブインで空腹を満たす女性トラックドライバーは黒木華だ。見た目も態度も言葉もトラッカーとしか思えない黒木が、ガッツリ系の「豚肉キムチ卵炒め定食」を見事に平らげていた。

 同じ役柄で主演ドラマが出来そうな女優陣に拍手を送りつつ、五郎単独の新シーズンを待ちたい。

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