知っておきたい「胃ろう」の現実 “拒むチャンス”は一度だけ

公開日: 更新日:

 2014年から新潟県の小国診療所(長岡市)で嘱託医を務め、東京との間を行き来している山本高史医師が言う。

「小国では治癒が望めない終末期の患者さんを診るときは、家族に『治療を望まれますか?』と尋ねるのが流儀です。『お迎えが来た』と治療を敬遠されるお年寄りも多い。回復が難しい入院患者さんに対し、家族と“阿吽の呼吸”で栄養補給を制限していくケースもあります。延命治療のあり方について考えさせられます」

■意識ないのに延命治療が3年続くことも

 山本医師がいまも目の当たりにしている胃ろうの患者がいる。3年前、脳梗塞で病院に運ばれたYさん(93歳)だ。意識が戻らないまま、急性期の点滴治療のあと胃ろうが造設されたという。

 倒れる前のYさんは、「私に何があっても延命だけはごめんですよ」と口にしていて、心臓に持病があってもペースメーカーの治療を拒んでいた。しかし、突然、倒れたまま意識が戻らなかったため、本人の意思は置き去りにされてしまった。

 Yさんは救命治療で急性期を乗り切ったが、2週間たっても意識は戻らず、自力では食事が取れなかった。そんな状況で、家族は主治医から「ここは救急病院なので、これ以上の入院は難しい」と告げられた。さらに「点滴を続けた状態では介護施設に受け入れてもらえない。胃ろうをつければ入所できる施設を紹介できる」と打診され、家族は胃ろうを選択した。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大逆風の田中将大まさかの〝浪人〟危機…ヤクルト興味も素行に関する風評が足かせに

  2. 2

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  3. 3

    楽天・田中将大の二軍テスト続行を明言…“外様”今江監督ならではの「常識的判断」

  4. 4

    「(菊池雄星を)高1で超えてやる」 天性の負けず嫌いが花巻東に進学した“本当の理由”

  5. 5

    斎藤元彦知事&代理人弁護士「時間差会見」のあざとさ…二人揃ってPR会社美人社長をバッサリ切り捨て

  1. 6

    八村塁が突然の監督&バスケ協会批判「爆弾発言」の真意…ホーバスHCとは以前から不仲説も

  2. 7

    斎藤元彦知事が百条委トンズラで大誤算!公選法違反疑惑に“逃げの答弁”連発も「事前収賄罪」の可能性

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    「終わらない兵庫県知事選」の行方…新たな公選法違反疑惑浮上で捜査機関が動く“Xデー”は

  5. 10

    斎藤元彦知事代理人の異様な会見…公選法違反疑惑は「桜を見る会前夜祭」と酷似、期待されるPR会社社長の“逆襲”