知っておきたい「胃ろう」の現実 “拒むチャンス”は一度だけ

公開日: 更新日:

 当初は家族も胃ろうによる治療に満足していたが、徐々に不満を募らせ、2カ月後には「もうこんな姿は見ていられない。早々に何とかしてください!」と非難をにじませるようになった。

「しかし、長期の胃ろうを中止するよう医師に申し入れても、現状ではそう意向は通りません。医師からすれば『医療行為を放棄する』ことは避けたいですし、安楽死問題にも抵触しかねません。また、後になって心変わりした家族から訴えられ、不作為の殺人罪に問われる懸念もあるからです。救急搬送から退院までの期間に胃ろうを拒むチャンスは、現状では医師から『胃ろうを作るかどうか』と聞かれたときだけと考えておいたほうがいい」(山本医師)

 結局、Yさんは意識が戻らないまま胃ろうによる延命治療が3年も続いている。チューブから栄養が補給されているため、顔はふっくらして色つやもいいという。

「胃ろうに対する正解はひとつではありません。だからこそ、もしもの時にどうしたいか、老親や自分の家族としっかり話し合っておくことが大切です。肉親が急に倒れた場合、動揺して頭が真っ白になり、『どんな形でもいいから助かって欲しい』と考える人がほとんどです。いざそうなった時に選択が変わるとしても、事前に話し合っておけば、『こんなはずじゃなかった』と後悔することは減ると思います」(山本医師)

 決して他人事ではないのだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」