助かるのであればがんは「遅く」見つかった方がいい
「できるだけ早く見つけて、早く治療したほうがいい」――。これが、がん検診のコンセプトです。しかし、今回は「結果が同じなら、できるだけ遅く見つかったほうがいい」という話をしましょう。
「遅く」というのが「早く」の誤りではないかと思われたかもしれませんが、そうではありません。
具体的な例で考えてみましょう。がんが1ミリの大きさで見つかっても、10ミリの大きさで見つかっても、50ミリで見つかっても、治療によってその後は同じような寿命が得られるとしたら、あなたにとってどれが一番いいでしょうか。
多くの人は、「そりゃあ、1ミリで見つかる場合だろう」と言うかもしれません。しかし、そこには「より早く見つかった方が寿命が長いに違いない」というような前提をすでにつくっている面があるのではないでしょうか。よく考えてみてください。「寿命が同じ」だとしたら、どうでしょうか。
1ミリから10ミリになるまで10年、10ミリから50ミリになるまで5年を要するがんだとしましょう。1ミリで見つけた場合、10ミリで見つけるより10年、50ミリで見つけるよりは15年長く、「がん治療と付き合って生きていかなければならない」という負の面があるともいえます。