【うつ病】自殺決意も…思い出の写真に涙がこぼれ落ちた
鉄道自殺はどうだろうか。ホームから電車に身を投げたら、鉄道会社から莫大な損害賠償が請求されるという。支払いは、群馬の実家でひとり暮らしをしている年老いた母になるだろう。母にはうつ病にかかっていることは内緒にしているし、死んでまで迷惑をかけたくない。
越川さんは、登山のほかに釣りも趣味にしていた。帰省する時は必ず釣り竿を携帯し、実家の周辺で川釣りを楽しんでいた。
「台風の日を狙い、夜釣りの川で自殺しようかと考えました。生命保険の受取人名義を母にしてね」
こうした自殺の方法を毎日、寝ても覚めても考えるようになった。
やがて、自殺の場所を川と決めて決行の準備に入った。しかし、その前に持ち物を少し整理しておこうと思い立ち、残高が少ない預金通帳や健康保険証、運転免許証をまとめて机の上に置いた。
ふと、登山や釣りの本などが乱雑に積まれた横にある本棚に目をやると、下段にアルバムが収まっている。ほこりを払ってパラパラめくると、母と2人で温泉旅行をした思い出の写真、登山仲間や釣り仲間と一緒にふざけ合っている何枚ものスナップ写真が出てきた。
その仲間たちの真ん中で、いつも笑顔で写っている越川さんがいる。しばらく見つめていると、涙が無精ひげを伝い、床にポロポロとこぼれ落ちた。