サルコペニアは心臓を悪化させる
■血圧の上昇を招く
サルコペニアが心臓の負担を増大させる大きな要因は「血圧の上昇」です。低栄養になり、筋肉量が減って身体機能が低下すると、体は重要臓器を守ろうとして血圧を上昇させるのです。心臓や脳の機能を維持するためには、一定量の血液を送り続けて栄養や酸素を供給しなければなりません。
そのためサルコペニアになると、血圧を上昇させる働きがあるホルモンが分泌されることが知られています。
また、「サルコペニア肥満」も血圧をアップさせます。筋肉が減少した場所に脂肪が入り込んで蓄積する状態のことで、サルコペニア肥満の人は、そうでない人に比べて高血圧症になるリスクが2倍以上高いという報告もあります。
サルコペニア肥満が進むと、肥大した脂肪細胞からアンギオテンシノーゲンという生理活性物質が分泌されます。この物質には血管を収縮する働きがあるため、血圧を上昇させるのです。
また、肥満になるとインスリンが過剰に分泌されます。インスリンは腎臓でのナトリウムの再吸収を高進して血液中のナトリウム濃度を高めるため、血圧が上がります。インスリンの過剰分泌は交感神経系も刺激し、末梢血管を収縮させる働きがあるホルモンが放出されます。これも血圧を上げる要因になります。体力が落ちた人の高血圧は、震災後の高齢者に見られた健康被害のように重症化しやすく、血圧が上がればそれだけ心臓の負担は増大します。