発症11年 囲碁棋士・木部夏生さん「糖尿病と対局」語る
■母の機転で即入院へ
母がすごかったのはその後でした。子供なので「糖尿病かもしれない」と医師に言っても容易に信じてもらえないと考え、わざと夜間の救急で病院に行ったのです。しかも、入院のための着替えやら準備万端整えて(笑い)。そのときの血糖値は560(㎎/dl)ぐらいでした。健康な人は130程度ですから、歩くのもしんどい値です。母の思惑通り、即入院になりました。
初日はインスリン点滴で血糖値を下げましたが、翌日から注射になり、3日後には自分で打つ練習が始まりました。初めは、棋院に通えないことがショックでしたが、医師から「インスリンを注射できれば普通に生活ができるし、囲碁も続けられるよ」と聞いたので、入院生活も退屈することなく、ひたすら囲碁の練習をしていました。
2カ月後に退院して学校に戻ったとき、私は病気や注射のことをクラスで発表しました。みんなに理解してもらえたので、いじめも何もありません。ただ、注射は教室では危ないので保健室でと決めていました。
注射の回数は、基礎インスリンのほかに毎食前に打つので、最低でも一日4回。おやつやジュースの前にも必要ですし、血糖値が200を超えたら追加を打つので10回ぐらいのときもあります。基礎インスリンというのは、一日の血糖値の上下幅が少なくなるよう、ある程度上げておくために打つインスリンで、食前のインスリンとは別物です。