肺、胃腸、心臓の病気は互いに大きく関わっている
COPDで慢性的な呼吸不全になると、肺で効率よく酸素と二酸化炭素の交換ができなくなり、血液中の酸素量が低下します。そうした低酸素血症が長く続くと、心臓と肺を結んでいる肺動脈が細くなり、肺高血圧症を起こして心臓に大きな負担がかかります。
すると、冠動脈の動脈硬化が進行したり、心不全を招いてしまうのです。また、COPDによって消化器の状態が悪化すると、腸肝循環がうまくいかなくなります。体内の生体物質や薬物などが、胆汁と一緒に十二指腸に排泄された後、腸管から再吸収されて肝臓に戻るサイクルのことです。肝臓ではさまざまな酵素が作られ、生命を維持しています。腸肝循環のバランスが崩れると、細胞外基質を溶かす酵素の活性が上がって動脈の壁が脆弱になってしまうという指摘もあります。
ほかにも、COPDによって起こる消化性潰瘍などの慢性的な炎症が血管にダメージを与えることも考えられます。
炎症によって生じるサイトカインが全身の血管の内皮細胞を傷つけ、白血球の一種である単球が内皮細胞にくっつきやすくなって動脈硬化を促進させるのです。動脈硬化が進めば、心筋梗塞や狭心症といった心臓疾患を招きます。
肺や胃の病気が、一見、無関係のように思える心臓や血管の病気に大きく関わっているのです。