<6>「おこげを食べるとがんになる」は本当なのか?

公開日: 更新日:

 東京大学元医学部長で名誉教授(病理学)の石川隆俊氏が言う。

「当時の私は癌研の研究者でしたが、杉村先生は苦労して人工合成された、その発がん物質を1グラム分けて下さいました。発がん実験をしてみなさいというのです。このとき、杉村先生は別の研究者にも同じ発がん物質を分け与え、『先に発がん実験に成功できた方にシンポジウムで研究発表してもらう』とおっしゃいました。幸い、私の方が先に発がん性を証明し、研究発表を行うことができました」

 杉村博士が合成したのは魚や肉などのおこげに含まれるヘテロサイクリックアミンと呼ばれる物質だった。タンパク質やアミノ酸を高温で焼くと生じ、体内に入って代謝されると発がん性を示す。

「おこげに含まれるヘテロサイクリックアミンが発がん物質であることは間違いありません。私もラットやハムスターの横腹に何遍も何遍も注射して皮下の肉腫を作ることに成功しました。その後、経口投与でもがんができることが確認されました。だからといって『おこげを食べるとがんになる』というのは早計です。なぜなら、ラットに与えた量は人間に換算すると毎日毎日、茶碗数杯分のおこげを年単位で食べ続けた場合であって、自然な状態ではないからです。つまり、普通に生活しておこげががんを誘因する可能性はあっても、現実的にはまず考えられません」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」