心臓マッサージの重要性がさらに広まれば救える命は増える
倒れた人の呼吸が止まっていて酸素を取り込めない状態だったとしても、血液中の酸素がゼロになることはありません。あきらめずに心臓マッサージを続けて血流を維持すれば、脳に血液を送って低酸素状態を避けられますし、心臓の壊死も回避できます。
心臓マッサージを行ったことで倒れた人の命が救われたケースはたくさんあります。中でも、一番有名なケースは「世界一の救命都市」と言われるアメリカのシアトルです。シアトルでは、「バイスタンダーCPR」(救急現場に居合わせた人による心肺蘇生)が市民にも広く浸透しています。1960年ごろから心臓突然死に対する救命処置の取り組みが実施され、1970年ごろには世界初となるバイスタンダー育成専門組織が設立されました。
その後、小学校から救命講習が教育され、市民の救命講習受講率は60%を超えています。これにより、シアトルでの救命率は年間平均40%前後と劇的にアップしました。日本の心肺停止に対する救命率は2~8%ですから、驚異的な数字です。それだけ、心臓マッサージは救命にとって重要なのです。
しかし、心臓マッサージの重要性はそこまで広く一般的には浸透していない印象です。知っているのと知らないのとでは救命率に大きな差が出てきます。また、的確に行わないとほとんど効果がないといえます。致死性不整脈に有効なAED(自動体外式除細動器)の使い方も含め、いざというときのためにも消防局などが実施している救命講習を受けることをおすすめします。