秋の物悲しさはこれで解消 悲しくなったら空を見ろ
「思考や判断、記憶といった認知は脳だけが行うと考えられてきました。ところが最近は人の身体の状況も認知に少なからず影響を与えることが複数の研究報告によってわかってきたのです」
例えば、うなずきながら人の話を聞くと、左右に顔を振りながら聞くより説得されやすい、重い荷物を背負うと坂が急勾配に見える、ドアを通り抜けると記憶が薄れやすくなるなど、その例は枚挙に暇がない。
昔から心と身体はつながっていて精神的ストレスは身体面にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られている。逆に身体の状況によって認知が変化するのではないか、という仮説はたくさんあるのだという。
その代表となる理論が有名な「泣くから悲しい」というジェームズ・ランゲ説だ。この理論は「悲しいから泣く」というキャノン・バード説とは対照的に、「人は刺激を受けて悲しみという感情が湧きあがり、泣くという身体反応が表れる」のではなく「刺激を受けて泣くという身体反応が表れ、それに伴って悲しみが押し寄せる」という理論だ。
「これを科学的に説明しようというのが顔面フィードバック仮説です。顔面筋の状態が感情を規定するという理論で、これを証明するために、ボツリヌス毒素を注射で顔面に打って、一時的に顔面麻痺を起こして、他人の怒り顔をみたときの扁桃体の動きを観察した研究があります。怒り顔を見た扁桃体は通常、強く反応しますが、顔面麻痺が続いている間の扁桃体はほとんど反応しませんでした」