上の血圧だけが高い高齢者 「理屈」と「事実」に食い違い
高齢者の高血圧の特徴は、下の血圧はむしろ低めで、上の血圧だけが高い「孤立性収縮期高血圧」にあります。
この「高齢者孤立性収縮期高血圧」にどう対応すればいいのか。今から30年以上前の私の最大の疑問のひとつでした。
30年前の私がどう考えていたかというと、下の血圧が低めで上の血圧だけが高いのは、動脈硬化が進んで血管が硬くなっている証拠で、その硬い血管に十分な血液を送り込むためには、高い血圧でなければかえって臓器の血流が不足して、脳梗塞や心筋梗塞など血管が詰まる病気が増えるのではないかというものでした。
当時、読んでいた内科の教科書にも「高齢者の孤立性収縮期高血圧は170㎜Hgを超えた場合には治療をしたほうがいいという意見が多い」というような、あいまいな記述があるだけで、治療すべきだとは書かれていませんでした。
しかし、この理屈は間違っていることが、1991年の論文で示されました。この研究は60歳以上の上の血圧だけが高い患者(上の血圧160㎜Hg以上かつ下の血圧90㎜Hg未満)に対し、降圧薬を使ってプラセボと比較したランダム化比較試験です。