著者のコラム一覧
佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

「夢」が死の恐怖を乗り越える術になる患者さんもいる

公開日: 更新日:

 ザクザクと波打ちぎわを歩く足音とともに一人の黒い人影があった。誰か、すぐにわかった。幼少年期をともに島で過ごした、そして既に海難事故で死んでしまったはずの古い友人だった。生きていたのか。

 彼は全くふり向かず岬の方向に向かって確信に充ちた早足で歩いていった。私はなつかしさのあまり後を追った。彼方には濃い影にいろどられた黒々とした岬が見え岬の先端には教会が建っていた。彼はなれた足つきでそこを目指していった。

 私は彼を見失うまいと後姿を追っているうち、突然教会の前に立っていた。彼の姿は既に見えなくなっていた。

 一転、真昼だった。私は何もない岬の先端に唯一人、立ち尽くしていた。眼前には ひたすら青くまばゆい海が渺茫とひらけていた。海はたゆみなく運動しつつも漲り又静止していた。

 遥か、遥か彼方……。そして太陽は またかがやきつつ私の真上にあった。

(ここまでのことは歌集「疾中逍遥」102ページ、103ページに記されています)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由