薬の進歩と適正使用がヒトの寿命を30年延ばした大きな要因
そう考えると、EBMが当たり前になる以前に大学の医学部を卒業し、ある程度の臨床経験を積んでから開業して独自の判断や耳学問で治療を行っている医師にかかった場合、その患者さんは30年ほど前の寿命しか持てないということです。勉強を続けて新しい知識をアップデートしていない医師と、都市部など競争が激しい地域で進んだ医療を実践している医師とでは、かかる患者さんの寿命が20年違ってくるといえるのです。
進歩している医療の技術はさまざまありますが、中でも薬は患者さんにとっていちばん身近な“医療”といえます。われわれの寿命を規定する因子の中で多くを占めているのは、細胞の突然変異が関係しているがんを除けば、心臓や血管のトラブルによる突然死や、生活習慣によって起こる全身性の病気です。糖尿病、高血圧、高脂血症が代表的なものですが、それらの病気は薬である程度は管理できるようになっています。
たとえば血糖値は、昔の管理の方法では血糖値が上下動して凸凹になってしまうものでしたが、いまは一定にコントロールできるようになっています。かつてはなかったHbA1cという管理基準の指標が登場したことによって、より効果的に薬を使えるようになり、管理しやすくなったのです。