パワハラを未然に防ぐ「し・か・り・ぐ・せ」の極意
「か」は過去は責めずに、隔離して2人で。
「過去は責めても変わりません。過去に何かがあったなら、『今後はどうするの?』と未来の話に言い換えましょう。そして、部下を叱るときには人前ではなく、2人でというのが基本。面談にやってきた外資系に勤務する方のケースでは、部下を大勢の前で叱ったことで人事部から呼び出されたのだと言います。ところが、『前職の日本の銀行では、皆の前で叱ることを推奨していました』とのこと。このような企業文化が根強く残っているので、気を付けましょう」
「り」は理論的に。
「感情的になってはいけません。次の『ぐ』を守れば可能です」
「ぐ」は具体的に。
「具体性が大事です。そうでないと、何で叱られているかわからないということになりかねません」
最後の「せ」は性格を責めない。
「30代半ばの管理職の女性が20代後半の女性職員に雷を落とした事例があります。遅刻が多く、短いスカートに胸元の開いたトップスという部下のいでたちに、『いつも遅刻してきてどういうつもり! やる気あるの? ないの? 格好からしてだらしない。その性格から直しなさい』と怒鳴った。この場合、身体的接触はないので『し』はOKですが、隔離はできていないので『か』はダメ。感情的に怒鳴ったので『り』もダメ。『ぐ』は服装のことを言ってないのでNG。そして『せ』についても、性格を責めているので逆効果です。直しなさいと言っても効き目は期待できません。冒頭の自殺事件では、女性は上司から『髪ボサボサ、目が充血』『女子力がない』と言われていたようです。このように業務に関係のないことで叱るのも論外です」
部下を注意するとき、「し・か・り・ぐ・せ」を思い出したい。
(構成・中森勇人)