男性の更年期に「男性ホルモン補充療法」という選択肢
53歳でうつ状態になり、心療内科を受診した男性(Y・Sさん)の場合はこうだ。
「この患者さんは抗うつ剤を処方されていました。長期にそれを服用していたのですが、症状は改善されず、健康度も落ちていくばかり。この方もテストステロンを補充投与すると、グラフ図(健康度を把握するチェックシステムでグラフが大きいほど良好)のように症状が改善されました。この間、抗うつ剤を少しずつ減量して、完全にやめるまで1年半かかりましたが、今では行動活性も増えゴルフではカートではなく歩きながらできるほどまで“元気”が回復しました。国際的な男性ホルモン治療報告のまとめによると、男性ホルモンを投与することによってうつ症状が改善し、社会的活性度も自信も回復、疲労感も少なくなるというものがあります。この報告は、更年期障害のいろいろな症状改善を的確に表していると思います」
とはいえ、男性ホルモン補充療法に副作用はないのだろうか?
「まったくそんなことはありません。私の70代の患者さんで奥さんが『男性ホルモンを打ったらがんになる』という迷信に惑わされて反対し、治療を一時中断した方がおられました。せっかくパワフルになられたのに、元気がなくなり、耐え切れずにまた、私の元に。『妻がうるさいので』と間隔を空けたのが悪かったのか、以前ほどの効果は出ません。極めて残念な事例ですね」
(構成=中森勇人)