体内で必要な遺伝子を作り続ける新薬は生涯に1度の投与で済む
「ウイルス」という単語を耳にしない日はないほど、世間は新型コロナウイルスの話題一色です。
前回、「デマに振り回されないようにしましょう」と注意喚起した直後、風説によって小売店からトイレットペーパーが消えるという現象が起こりました。情報の拡散スピードの速さと、集団心理の恐ろしさを改めて感じ、情報の正確性を自分自身で確かめることが、いかに大切かということを痛感しました。
これまで、「ゾルゲンスマ」という脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する新しい遺伝子治療薬について何度か紹介しました。ゾルゲンスマは今年2月26日に製造販売承認が下りたばかりの薬で、超最新の薬といえます。
前回はこの薬が患部に薬を運ぶために「ウイルスベクター」を使っている点が画期的だとお話ししましたが、ゾルゲンスマには他にも画期的なところがいくつもあるのです。
まずはその金額で、米国では1回の投与が2億3000万円というから驚きです。そして、「一生涯に1度しか投与しない」という点も画期的といえます。他のSMAに対する遺伝子治療薬であるスピンラザは反復して投与しますが、ゾルゲンスマは1回きりでよいのです。