政府は推進しているが…「在宅死」は理想の死に方なのか
「医療政策によって入院から在宅に移行する中で、人々の価値観や関心が変化したのでしょう。人の心というのは、その時々の社会通念によって移ろうものですからね」
それでは我々は、どのようにして「最適な死に方」を見つければいいのだろうか。小堀さんは「かかりつけ医を持つことが大切だ」と強調する。
「かかりつけ医は、その人の趣味や思考、家族との関係性など、患者を取り巻くすべての環境を理解しているはず。それぞれの望ましい形を総合的に判断し、必要な医療を過不足なく提供することができます。その結果、自宅でみとることが理想の場合もありますし、わずかな時間でも延命するために病院に搬送することもあります」
小堀さんが在宅医療で患者さんに関わる期間は、平均すると4年6カ月。その間はずっと、患者が生活する場所に入り、家のしつらえや雰囲気を肌で感じながら、患者の胸に聴診器を押し当てて心音を聞く。
そんな付き合いを続けていれば、おおよそのことが判断できるようになるという。その人が生きてきた歴史やその背景、家庭の事情といったものが見えてくるのだ。