体温を下げない冷感グッズは熱中症リスクをむしろ上げる
■メントールによる「錯覚」危ない
たとえば、ハッカ油などのミントが使われている商品は、含まれる「メントール」という物質が冷たさを感じる神経を刺激し、温度変化を感じたときと同じ作用が起こって冷たく感じる。メントールが含まれている冷却スプレーや冷却材も同様だ。
「しかし、メントールによって感じる冷感はいわば錯覚で、実際に体温を下げているわけではありません。暑い環境でそれらの冷感グッズを使って脳が『冷えた』と誤解すると、汗をかいて体温を下げるシステムを止めてしまう上、逆に汗腺を収縮させて体温を上げようとするケースも考えられます。すると、体内に熱がたまり続け、むしろ熱中症を引き起こす原因になってしまうのです」
額に貼る冷却シートは、ジェルに含まれる水分が蒸発する際の「気化熱」によって、接している部分の温度を下げる。
「ただし、あくまでも限られた部分の温度が一時的に下がるだけで、深部体温までは下げられません。局所を冷やす氷枕も同じです。熱中症の予防では、水分補給のほかに深部体温=脳を冷やすことが重要になります。ですから、熱中症の症状が出た場合、首筋や脇の下など太い血管が通っている部分を冷やすことが常識になっています。全身を流れる血液を冷やすことで深部体温=脳を冷やすためです。冷却シートを額に貼っても脳までは冷えませんし、タオルやスカーフの冷却効果は短時間で持続性がありません。いずれも深部体温を下げる効果までは期待できないと考えていいでしょう」