社会・心理的要因がもたらす健康リスクは侮れない
病気の発症は単一の原因だけによって生じることは珍しく、一般的には複数の原因が時間をかけて病気の発症リスクを高めます。たとえば、喫煙は肺がんをもたらす原因のひとつといえますが、数年ほど喫煙をしたところで、すぐに肺がんになるわけではありません。喫煙だけでなく、遺伝的要因や生活環境など、さまざまな要因が、ゆっくりと時間をかけ、複雑に影響を及ぼし合いながら肺がんの発症リスクを高めるのです。
死亡リスクに影響を与える要因はさらに複雑といえますが、具体的にはどんな要因がどれほど影響を及ぼしているのでしょうか。米国科学アカデミー紀要の電子版に、死亡リスクに影響を及ぼす因子と、その関連性の強さを検討した研究論文が2020年6月22日付で掲載されました。
この研究では米国に在住の1万3611人(平均69・3歳、女性58・6%)が対象となり、6年にわたり追跡調査が行われています。なお、研究結果に影響を与えうる年齢、性別、人種などの因子について統計的に補正をして解析されました。
その結果、死亡のリスクは、喫煙者で1・91倍、過去の喫煙歴で1・32倍、過度の飲酒歴で1・36倍に増加したほか、離婚歴で1・44倍、失業歴で1・32倍、経済的困窮で1・32倍、人生に対する満足度が低い人で1・31倍、否定的な感情を有する人で1・23倍、統計的にも有意に高いことが示されました。