紙芝居師に出会って救われた…かみはるさん股関節症を語る
もう、障害を隠そうとは思わない
そんな“闇”から救われたのは、専門学校2年の授業で紙芝居師に出会ったことです。今、私が所属している「渋谷画劇団」の紙芝居師が学校に講義をしに来ていたんです。
とにかく明るく元気よく、自分の殻をぶち破って全身で表現することを求められる授業でした。私は脚が悪いので座って見学していると、紙芝居師のヤムちゃん先生から、大きな声で「具合悪いのか? 大丈夫か? 脚が不自由でも発声はできるでしょう。できないことを探すんじゃなく、できることをして!」と言われました。その瞬間、「はっ」として、だんだん先生に心を開くようになっていったのです。
紙芝居の授業がカウンセリングのように作用して、ほかの授業にも出られるようになり、無事に卒業できました。そのうえ、卒業後はフリーターだった私に「紙芝居やりに来ないか?」と言ってくれたのもヤムちゃん先生でした。
ただ、紙芝居師の見習になってからも脚の悪化は止まらず、25歳で松葉杖を2本使わないと移動できなくなりました。「4本足か……」と絶望しました。それまでは、人前では痛み止めを飲んで杖を使わず活動していましたが、それも限界。すっかり無気力になって、紙芝居師をやめようと思った時期もありました。でも、ヤムちゃん先生がこう言ってくれたんです。
「脚が原因ならそれはやめる理由にならないよ。その脚は個性だ。“不自由でも私は杖をついて元気でやっています”って、そんなメッセンジャーとして活躍できると思わないの?」
私は「そんなことできるわけない!」と叫んで反発しましたが、そんな私をさらに引き留めて、「かみはるにできる、かみはるにしかできない現場を一緒に模索していこうよ」と支えてもらったのです。
その後、パラスポーツと出合って、「こんな世界もあるんだ」と視野が広がりました。もう、障害を隠そうとは思いません。松葉杖姿を恥ずかしいと思っていた過去の自分に、「早く受け入れちまえよ」って言ってやりたい気持ちです(笑い)。
(聞き手=松永詠美子)
▽かみはる 1989年、千葉県生まれ。23歳のときに「渋谷画劇団」に所属し、紙芝居師として活動。25歳でパラスポーツと出合い、渋谷区オリンピック・パラリンピック推進事業の公認紙芝居師としても活躍した。