音楽を生業にしているのに…月光恵亮さん難聴との闘い語る
音楽を聴けなくなって、そりゃあ寂しいです。「沈黙の世界」ですから。ただ、聴力はゼロではないので、新しい音楽をどうしても聴きたいときは、短時間ならイヤホンを着けてボリュームを上げれば聞こえます。普通、音楽って「聴くもの」だと思っていますよね。でも、僕は記憶の中に素晴らしい音楽がたくさんあって、いつでもすぐに頭の中で鳴らすことができるんです。音色も含めて。
それに、音楽は僕にとっては鑑賞するものではなく「つくり上げるもの」なんです。
だから、今は音楽に代わって絵を描くことで、創造への欲求を解消できています。絵を描いている間は、音楽をつくり上げている時間と変わらないんです。
僕の祖父は、京都にある世界遺産の龍安寺の襖絵を描いた絵描きで、僕も子供の頃から絵が描けました。引きこもり気味で絵ばかり描いていたので、心配した兄が引っ張りだそうと音楽を聴かせてくれて、僕の人生が変わったんです。
耳が聞こえなくなって音楽を奪われていったとき、また少しずつ描くようになり、3年前に大きな過ちを犯した頃から「これからは絵を自分のメインにしよう」と思い、本格的に始めました。耳が聞こえていたら、おそらく絵をもう一度描くようにはならなかったと思います。