ヘロヘロになりながらの往診では患者や家族に安心を与えられない
看護疲れに陥ったご家族と、同じくヘロヘロになりながら往診する医療スタッフという状況では、いい在宅医療は実現しないのです。
その患者さんは76歳で奥さまと2人暮らし。骨髄異形成症候群と老衰があり、私たちが訪問するようになりました。
奥さまは病状が変化するたびに不安になるようで、日中、頻繁に電話がかかってきました。その都度、簡単なアドバイスを伝え、必要があれば必ず訪問して患者さんの状態を確認。状況に応じて、症状を楽にするために輸血などの治療を行いました。
そして私たちが帰った後も患者さんがつらさを感じず過ごせるか、一生懸命に考え、奥さまに伝えるように努めました。そうすることで奥さまも安心されて、ご本人とともに夜間はぐっすりお休みできました。やがて嫌な症状もなく、徐々に衰弱し、眠ったように永眠されたのでした。
私たちは常にどうすれば自宅という場で患者さんが療養しながら、そこのご家族もみんな安心を得られるかを考えます。
まさにそのことが在宅医療に求められる「患者さんの生活を丸ごと見るテーラーメードな医療」のあるべき姿だと考えています。
患者さんが安心しなければ、私たちも安心できません。だからこそ、患者さんやご家族の生活が不規則になりがちな深夜の往診を避け、夜間は安心してお休みしてもらう。昼間の重点ケアの実施は、在宅医療において必要不可欠だと考えています。