性感染症編(2)股間のかゆみの意外な原因 糖尿が進行して…
男性は性交渉以外でも発症するインキンタムシを疑っていたが、そうではなかった。
「インキンタムシは水虫の原因として有名な白癬菌による皮膚疾患を言います。かゆいのは白癬菌が角質層の下の表皮細胞に接触すると炎症が起きるからです。しかし、この男性の場合は顕微鏡で調べても白癬菌はいませんでした。陰嚢湿疹も検討しました。湿疹は皮膚に炎症を起こす病気の総称で、原因は汗、植物、化学物質など多岐にわたります。このため原因を特定するのは難しいのですが、真夏に発症するものの中には汗による接触皮膚炎や脂漏性湿疹が考えられます。しかし、これでもありませんでした」
その後、この男性は会社の健康診断で血糖値が高いので治療するように指示されていたのに放っておいたことが判明した。
「恐らく、かゆいのは皮膚掻痒症だったからで、糖尿病が進行したことで、かゆみが増したと考えられます」
皮膚掻痒症とは、発疹などの目立った症状がないのに、かゆみが出る病気のこと。「限局性」と「汎発性」があり、前者は主に中年以降の女性の外陰部、男性のおしりなどに出やすい。後者は内臓の病気が原因で全身にかゆみが出やすい。代表的な内臓の病気は糖尿病、肝硬変、慢性腎不全など。バセドー病や鉄欠乏性貧血などでも発症する。