人工透析患者ががんになっても抗がん剤治療は不可能ではない
以前、人工透析を受けている患者ががんになり、抗がん剤投与の検討を依頼されたことがあります。この時は、安全に投与できるのか、投与した場合の抗がん剤が体に与える影響、人工透析と抗がん剤投与のタイミングなどを慎重に検討しました。
また、「5-FU」という抗がん剤を注射した場合の血中濃度を測定し、人工透析との関係についても検討しました。5-FUは肝臓で代謝されるとされていますが、腎機能が関係していないわけではありませんでした。一時的に血中濃度が高くなったのです。
5-FUは、主に胃がんや大腸がんなどで使われます。24時間持続点滴では人工透析の影響をほとんど受けないという報告がありますが、われわれが行った急速静脈注射法では、腎不全の人は、腎臓が健常である人に比べて、高い血中濃度を示したのです。
ここで申し上げたいのは、人工透析中の患者でも抗がん剤治療がまったく禁止、できないわけではないということです。投与方法や人工透析を受けるタイミングを計ることで、投与は可能になります。
■抗がん剤投与によって急性腎不全を起こす場合も