強いストレスが急激にがんを進行させたのではないか
「ストレスとがんの関係」についてたずねられると、Y医師のことを思い出します。
東日本大震災の発生(2011年3月11日)から3カ月後だったと記憶しています。被災した病院に勤務するY医師が私を訪ねてきました。
Y医師は、津波で亡くなったご遺体の検案を毎日行い、夜はお酒を飲まないと眠れない日が続いたそうです。病院の1階は完全に破壊され、人工透析もできなくなり、悲惨な状況が続いているとのことでした。
Y医師が私を訪ねてきた主な目的は医師派遣の依頼でした。
Y医師はもともと頑強な体格で、この時は元気そうに見えましたが、苦労が重なってか、少し小さくなった印象を受けました。1時間ほど話して帰られましたが、それがY医師とお会いした最後でした。
それから1年後、Y医師の訃報が届きました。スキルス胃がんで亡くなったというのです。
私は愕然としました。考えてみれば、お会いした時、Y医師の胃にはすでにがんができていたのでしょう。あれから、体調がすぐれないことがあっても、検査する暇もなかったのではないでしょうか。そして、あの大震災のストレスが、急激にY医師のがんを進行させたのではないかと思いました。