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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

診察室に入ってきた時の表情、姿勢、動作、歩き方、会話に着目

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最初の診断は「絶対」ではない。別の可能性が考えられることも

 2006~08年に行われた疫学調査では、認知症のうち最も多いのがアルツハイマー型で67.4%。2番目が血管性認知症で18.9%、3番目がレビー小体型で4.6%、そして前頭側頭葉変性症が1.1%でした。

 アルツハイマー型、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症は4大認知症とも呼ばれ、いずれも改善は困難なわけですが、治療の目標はそれぞれ異なります。

 それゆえに、認知症とひとくくりにせず、鑑別診断が重要です。

 アルツハイマー型とレビー小体型は薬物治療で進行を遅らせることが目標となりますし、血管性認知症は進行させないことが目標。

 前頭側頭葉変性症は、現時点では確立された治療法はなく、非薬物療法や環境調整などで、患者さん、およびご家族の生活の質を向上させることが目標となります。

 さて、認知症の疫学調査の結果を紹介しましたが、この結果ではレビー小体型が非常に少ない。医師の中には「レビー小体型はもっと多いはず。アルツハイマー型と誤診されている患者さんがかなりいるのでは」と指摘する声もあれば、そうではないと指摘する声もあります。

 実際のところ、レビー小体型にアルツハイマー型の症状が合併することは多く、初期では鑑別が難しいケースもあります。レビー小体型以外の認知症でも同様です。患者さん側としては、最初に診断された病名を100%正しいと思い込むのではなく、別の可能性もあるのではないか、という目を持つことも必要だと思います。

 アルツハイマー型とレビー小体型の典型的な違いを紹介します。

【アルツハイマー型】
・記憶障害が主に現れる
・幻視は少ない
・物盗られ妄想がよくある
・認知機能は緩やかに低下
・穏やかで、症状が大きく変動することは少ない

【レビー小体型】
・人や虫がいるなどの幻視や見間違いが多い
・幻聴も少なくない
・幻視で嫉妬妄想などが引き起こされる
・認知機能は良い時と悪い時とがある
・寝ている時に大声を出すなどの異常行動がある
・表情が乏しく、気分も沈むことが多い

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