統計医学的検討…「有意差なし」は必ずしも「効果なし」の意味ではない
同じように相対危険であるオッズ比の方も見てみよう。95%信頼区間は0.54~1.23である。感染の発症を100から54に減らすかもしれないし、123に増やすかもしれない。こちらは、減らすにしろ増やすにしろ、それなりに影響がある結果に思うだろう。ただ、増やすとも減らすともはっきりとは言えないというのは、差で見たときと同様である。
続いて危険率を見てみよう。差で見た場合は0.38、相対危険で見た場合には0.33とある。この数字を正確に解釈するのはむつかしいが、とりあえず「マスク推奨の効果があったとしても、その効果がまぐれであった可能性」と考えると理解しやすい。0.3%発症が減ったといってもまぐれの可能性が38%あるし、100から82に減らしたといってもまぐれの可能性が33%あるということである。まぐれで効果ありの可能性が30%以上ある、偶然効果ありという結果が出た可能性が30%以上である。故にマスクに効果があるとは言えない。これが検定のプロセスである。
そこでまぐれの可能性、危険率がどれくらいであればまぐれでないと言えるのか、ということであるが、一般に医学論文では5%未満が採用される。この結果で言えば、5%以上なので統計学的に有意な差はないということになる。