著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

研究結果と個人の実感の差「予防のパラドックス」はなぜ起きるのか

公開日: 更新日:

 ここで、肥満糖尿病患者、がん患者のようなコロナ重症化のハイリスク患者に限ってマスクを勧めるという対策と、全住民に対してマスクを勧めるという対策を比較してみよう。前者ではマスク着用が守られる率が高く、100%近い着用が達成され、後者では着用があまり守られず、50%の人が着用しただけという状況を考えてみる。一見考えると、きちんと指示を守る前者に集中した方が効果のある対策と感じられるかもしれないが、必ずしもそうとは言えないし、むしろ後者の対策の方で効果が大きいことが多い。なぜか。

■予防効果は全体対策の方が良い

 全住民の中で糖尿病や肥満、基礎疾患を持つなどハイリスク患者が30%だったとしよう。ハイリスク患者のみが100%マスクをすると仮定して、マスクによって感染が相対危険減少(疫学の座標のひとつ。暴露群と非暴露群における疾病の割合である相対危険を1から引いたもの)で20%予防できるとすると、10%の人が感染したという流行状況において、マスクで予防できる感染者数は全人口の0.6%になる(30%の10%=3%が感染する場合に、マスクでその3%の感染のうち20%予防できる。つまり感染者数の減少分は30%×10%×20%=0.6%)。10万人を対象とした地域であれば、30%のハイリスク者3万人のうち0.6%なら180人である。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」