白髪を科学する(4)病気の治療薬で「毛髪の再着色化」が報告されている
また、パーキンソン病の74歳男性は、メラニン色素合成にも関係する治療薬の投与で総白髪がごま塩にまで回復した。がんの免疫チェックポイント阻害剤や抗がん剤によるHR報告も複数ある。
「HRの仕組みは複雑なため、特定薬剤だけが寄与したとは言えません。ただ、現時点でHRの薬剤作用機序は2つ考えられます。ひとつはヘアサイクルの回復に伴い毛髪色素細胞のサイクルも復活したケースです。抗がん剤治療後のHRがその例です。抗がん剤は副作用で脱毛することが多い。治療後ヘアサイクルが正常に戻る際に、メラニン合成サイクルも刺激され、活性化する可能性があります」
もうひとつは色素細胞に直接作用してメラニン合成系を高めるケース。パーキンソン病治療での症例がそれにあたる。
「白髪の大半は色素細胞がないとされますが、そうでない人がいて、薬剤の刺激によりメラニン合成が再開してHRとなるとも考えられます。皮膚の色素細胞が毛包に遊走し、脱分化して幹細胞として定着する可能性もあります。いまはHRが臨床上重要視されず、報告事例は少数。しかも白髪の回復条件は非常に複雑です。それらが改善され、研究が続けば、いずれ白髪治療は可能になると思います」 (おわり)