歯周病菌がもたらす“免疫暴走”で不調が全身に…アルツハイマーや脳梗塞などの原因にも

公開日: 更新日:

歯周病ケアで糖尿病が治ったケースも

 実際、こんな例もあります。かなり昔に奥歯の治療した際の詰め物が腐ったため、歯科医に歯根の奥までドリルで穴をあけてもらい、歯根管手術を受けた方がいたのですが、このときに歯周病菌が血液中に入ってしまいました。これにより炎症性サイトカインが脳にまで到達し、うつ病を発症した方がいらっしゃるのです。

 もちろん、歯科治療や歯石ケアを受けたらすぐにこのようなことが起こるわけではありません。日ごろから定期的に口内ケアを行ったり、免疫暴走が起こらないよう生活習慣に気をつけたりしていれば、そうそう起こりません。

 逆に、なかなか糖尿病が治らなかった方が歯科できちんと歯周病ケアをしてもらったところ、糖尿病が治ったという例もあるので、積極的なケアをお勧めします。

 以上、歯周病を例にお話ししましたが、肥満だったり化学物質の摂りすぎなどが常態化していたりすれば免疫暴走が生じるため、同じことは起こりえます。

このように体内が免疫暴走状態だと、何かしらの病態が現れるおそれがあるわけですが、現れるのは「その人の最も弱いところ」ということになります。肌が弱い人は肌、血管が弱い人は血管、腰が弱い人は腰、太りやすい人は肥満、というように現れ方はさまざまなものの、そのおおもとには免疫暴走があるのです。

■加齢臭も免疫暴走から生じる?

 中高年になると出てくると言われる、加齢臭。そのおもな原因は、皮脂成分が酸化することで発生する「ノネナール」という成分ですが、免疫暴走が加齢臭に影響を与える可能性もあります。免疫暴走状態だと、皮脂腺から分泌される皮脂中に「パルミトレイン酸」という脂肪酸が増えたり、それが酸化しやすくなったりし、加齢臭が強まることも考えられるのです。

 体内が免疫暴走状態だと、体の放つ臭いまで変わってくる可能性があるということです。

  ◇  ◇  ◇

▽飯沼一茂(いいぬま・かずしげ)

 医学博士。純真学園大学客員教授。日本機能性免疫力研究所代表。1948年生まれ。1971年立教大学卒業後、ダイナボットRI研究所(現:アボットジャパン)入社。1987年大阪大学医学部老年病医学講座にて医学博士取得。1995年、米国アボットラボラトリーズ・リサーチフェロー。2008年よりアボットジャパン上級顧問。2010年より国立国際医療研究センター・肝炎免疫研究センター客員研究員。2012年から純真学園大学客員教授。ホルモン、腫瘍マーカー、感染症マーカーの測定法の開発に多く携わる。特に、C型肝炎マーカーの開発によりC型肝炎の輸血による感染を撲滅し、世界的な評価を得た。そのほか、HIVマーカーの測定法開発やエイズ撲滅のボランティア活動を積極的に行っている。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷に懸念される「エポックメーキングの反動」…イチロー、カブレラもポストシーズンで苦しんだ

  2. 2

    やす子の激走で「24時間テレビ」は“大成功”のはずが…若い視聴者からソッポで日テレ大慌て

  3. 3

    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

  4. 4

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 5

    阿部巨人が《もっともビビる》阪神投手の復帰でCS戦々恐々…Gナインに根付く苦手意識

  1. 6

    阪神・大山悠輔を絶不調に変えた根本原因…良かれと取り組んだオフの肉体改造が裏目

  2. 7

    兵庫パワハラ知事やコバホークも? 東大→官僚→政治家は“ピカピカの経歴”にあらず旧いタイプ

  3. 8

    やす子「24時間テレビ」での好感度上昇は諸刃の剣…早くも“イジリにくい芸人”になる懸念

  4. 9

    キムタクが迫られる「主役の座」からの退場…盟友からも“二番手”降格を提言される異例の事態

  5. 10

    神田正輝「旅サラダ」“有終の美”前に拒絶態度は変わらず…沙也加さん元カレ舞台中止で復帰は絶望的