(1)「飲むHIV予防薬」が性風俗従事者らに人気
性感染症において今年最大の話題は「梅毒」だろう。近年、20代女性を中心に大都会の繁華街だけでなく地方都市へ広がっているのが特徴だ。しかし、同時にHIV感染者とAIDS発症者を合わせた後天性免疫不全症候群の年間新規感染報告件数が増えていることにも注意したい。その確定数は2013年の1590件をピークに2022年には884件まで減少した。しかし、2023年には960件と増加に転じ、今年は昨年を上回るペースで増えている。ちなみに2023年までの累積総数は3万5381件(HIV2万4532件、AIDS1万849件)だ。
これに危機感を募らせているのが、性風俗産業従事者(CSW)や性行動に積極的な人たち。「性感染症~プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長の尾上泰彦医師が言う。
「性感染症の実数は報告件数よりはるかに多い。CSWらの人たちはそれを実感しているから警戒するのは当然です。実際、当院ではCSWの人たちを中心に『飲むHIV予防薬』を希望する患者さんが目立って増えています。地方からオンライン診療を希望する人も少なくありません」