手術を「受けない」「受ける」考え方…3度の狭心症と前立腺がんを経験した医師に聞いた
糖尿病の食事改善は炭水化物を極力カット
そう笑って振り返るが、3度もの大病を起こしたのには理由がある。糖尿病だ。
「医者の不養生で、最初に狭心症を起こした翌年に糖尿病と診断されたのですが、無症状だったこともあり、3度目の手術を受けるまで放置していたんです。しかし、そのときのHbA1cの数値は9.5%。さすがにこのままではマズイと、治療を受けることを決意しました」
HbA1cは過去2カ月の平均的な血糖状態を示す数値で、糖尿病の状態や治療経過をチェックする材料になる。基準値は6.5%未満で、失礼ながら医師とは思えない数値の悪さだ。
「恥ずかしながら、若いころは好きなものばかり食べていました。新日本プロレスのリングドクターを務めていたころは毎週1回はしゃぶしゃぶで、それ以外は中華かちゃんこをがっつりと。好物はパスタやかた焼きそばで、シメのデザートもしっかり平らげていたんです。しかも、母をはじめ家系には糖尿病がある人が複数います。遺伝的な素因に加えて、食生活はメチャクチャですから糖尿病になって当然ですね」
医師だから、そんな食生活がよくないことはもちろん知っている。
「知識があることとその知識を生かす行動ができることは、まったく別。糖尿病の治療をキチンと受けるようになって、生活改善に励む患者さんの気持ちが痛いほどよく分かりました」
患者の気持ちが分かるからこそできるアドバイスもある。
「糖尿病の食事改善で炭水化物は絶対によくない。私が口にするのは玄米を1日65グラムのみです。大好きだったパスタもかた焼きそばも、いまは食べません。甘いものの間食もやめています。でも、肉と魚、野菜はたくさん食べても大丈夫。お酒も、糖質オフの缶チューハイを毎晩2本です。炭水化物を極力カットすれば、それほど食事制限はつらくありません。HbA1cは5.9%と正常です」
もちろん、薬は服用する。朝と夜にDPP-4阻害薬を1錠ずつ。それに加えて、血糖値をチェックしながら、インスリン注射を2~6単位追加しているという。
「糖尿病で血糖値がどんなに高くても高血糖で死ぬことはありません。しかし、薬が効き過ぎて低血糖になると意識を失って、最悪の場合、命を落とします。糖尿病の薬で怖いのは低血糖ですが、患者さんの中には薬の副作用をはじめ薬の名前さえ知らない人もいます。糖尿病と薬との関係については患者さんももっと知るべきだし、医師はしっかりと伝えるべきですね」