【すぐできる問診票付き】男の冷え性、ストレートネックの人はご用心! この冬は気温の乱高下で症状悪化も

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 冷え性は、手足の指先が冷たくなり、入浴してもなかなか温まらないのが特徴で、冬はあかぎれやしもやけを起こしたりする人もいる。一般に代謝の悪化が主因とされ、女性や高齢者に多いが、意外にも男性が発症するケースはそれ以外に原因があり、その“震源地”は首にあるという。

 ◇  ◇  ◇

 21歳の男性は大学に入学したころから首が痛むようになったのに加え、頭痛や肩凝り、動悸、ふらつき、食欲不振なども現れて、1年を通して冷え性に悩まされるようになった。気温が高い夏に汗をかかない日がある一方、それほど暑くなくても顔がほてって汗をかいたり……。

 冬の指先の冷たさはとにかくつらくて、体温調節の悪さを実感する毎日だった。そんな肉体的な不調に加えて気分の落ち込みや不安感なども相まって受診したのが、東京脳神経センターだ。男性を診察した理事長の松井孝嘉氏が言う。

「男性の首の後ろ側の筋肉を36カ所に分けて触診すると、すべてのポイントで筋肉が硬く、痛みが強かった。首の筋肉の凝りによってさまざまな不調が生じる頚性神経筋症候群が、男性の不調の正体でした」

 なぜ首の筋肉の異常によって、冷え性をはじめとする体温調節の不具合や食欲不振などの消化器症状、さらに精神的な障害に悩まされるのか。対策を含めて松井氏に詳しく聞いた。

「首から胸、腰にかけて骨は、小さな骨とクッション役の椎間板が積み重なって構成され、緩やかにカーブしています。その中心には、脳から連なる自律神経が通り、枝分かれして臓器や手足の末梢にまで延びて、無意識のうちに臓器の働きや体温、ホルモン分泌、精神活動などを調節しているのです。つまり、自律神経の通り道において、首はすべての臓器や器官、脳をつなぐ最も重要な関門。そこの筋肉が障害されると、首の骨の変形を招いて、影響が自律神経に及ぶため、さまざまな不調が生じるのです。実際、初診時の男性は首の湾曲がなく、ストレートネックでした」

 写真は男性のレントゲン画像で、左は初診時。なるほど、首の骨がまっすぐに連なっていて、ストレートネックになっている。右は、8週間の入院治療を終えて不調がすべてなくなったときのレントゲン画像で、あご側にゆるやかに湾曲しているのが確認できる。

「首の骨は、アルファベットの『C』のように前弯しているのが正常です。このカーブがあることで、5~6キロの頭の重さがうまく吸収され、首への負担を軽減できます。ストレートネックだと、その頭重がダイレクトに首にかかるため、自律神経への負担も強い。そういう生活を続けていると、男性のように肉体的な不調も精神的な不調も少しずつ広がっていくのです」

 自律神経は、交感神経と副交感神経がそれぞれバランスをとって調節している。一般に交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキの役目をするといわれるが、頚性神経筋症候群による自律神経の不調の場合、副交感神経の働きが弱まってブレーキが利かない状態だという。

「私の外来を受診される方の主訴は、めまいや倦怠感、うつですが、気温差が大きいときは体温調節に関連する症状を訴える方が多くなります。男性も気分の落ち込みを一番に心配されていましたが、冷え性とほてりという相反する症状も不安の種でした。冷え性は、副交感神経が落ちているときの典型的な症状で、そうなるとドライアイやドライマウスなど潤いも悪くなります。男性は、ドライマウスも併発していました。この方のように男性が冷え性を訴える場合、自律神経のバランスが乱れている可能性が高いでしょう」

■体調の変化で「天気予報がよく当たる」

 冬の気温は一般に低値安定だが、今年は乱高下している。東京の場合、今月12日の最高気温は3月並みの14度だったが、翌13日の朝は2度まで低下し、夕方は雪が舞った。そして16日は最高気温が真冬並みの7度だったが、18日は南風の流れ込みが予想されて再び3月並みの14度予想だ。

「自律神経が乱れているところに、気温差や気圧差の影響が重なると、体温調節などが追いつかず不調がより強くなりやすい。天気が悪くなる前日に症状が強くなるのがその典型です。天気の変化が体の不調とリンクすることに気づくと、『天気予報がよく当たるようになった』とおっしゃる方もいます」

 暖かい室内から寒い屋外に出ると、冷気でくしゃみや鼻水が止まらなくなることがある。よく「寒暖差アレルギー」と呼ばれるが、アレルギーではなく、自律神経の乱れが原因と考えられている。そのほか寒暖差の影響が皮膚に出ると、かゆさでかきむしる人も少なくない。

体温調節障害には首の治療が欠かせない

 表は、松井氏が初診患者に記入してもらう全30の問診票だ。すべて自律神経が調節する症状で、該当する数が4個までは軽症、5~9個が中等症、10個以上は要治療だという。

「私の外来を受診される前の患者さんは、仮に問診票の症状が複数当てはまっても、そのときに最も心配する症状に対応する診療科を受診します。たとえば不安感なら精神科で、肩や首の凝りなら整形外科、吐き気や下痢なら消化器科、ドライアイなら眼科、冷えやほてりなら内科・婦人科……といった具合で、眼科で目薬を処方されて目の乾きがよくなっても、根本的な治療になりません。消化器科で胃薬や整腸剤を処方された場合もしかり。それで患者さんは、ドクターショッピングを重ねやすいのです」

 では、どうすればいいのか。重要なキーワードが、ストレートネックだという。

「整形外科でレントゲン撮影してストレートネックが認められると、整形外科医は『これは治らないからうまくつき合うしかありません』と対症療法の鎮痛薬を処方したり、牽引などの理学療法を指示したりします。しかし、首の筋肉をほぐす治療を続ければ、ストレートネックが解消して、自律神経症状もすべてよくなります。私は、ストレートネックが頚性神経筋症候群を疑う重要なサインとみていて、私が治療した患者さんは皆さんストレートネックも症状も完治しているのです。ですから、ストレートネックがあって、なおかつ冷え性をはじめとする体温調節障害などがある方は、首の治療が欠かせません」

 治療は、特殊な医療用低周波治療器2種を使用する(指圧施設などにある低周波治療器とは異なる)。男性の場合、要治療の中でも18個以上の重症で、入院で行われ、土日を含む毎日2回、1回10分ずつ低周波治療を受けた結果、8週間で全快。無事退院したという。

■10年以上ドクターショッピングを繰り返し…

 毎日の生活の中で首を守るにはどうすればいいか。

「パソコンやスマホ、ゲームなどでうつむく姿勢がよくありません。仕事中は1時間に1回、10分程度パソコンから離れて、首を楽にすること。入浴は、適度な温度でしっかりと肩までつかり、首を温めることです。自律神経のバランスが崩れている人は、汗をかき過ぎるタイプとあまりかかないタイプがいますが、いずれにせよ首を温めないと改善しません」

 松井氏の外来を受診した人の中には、10年以上ドクターショッピングを重ねた人もいるという。ストレートネックや体温調節に問題がある人は、首の異常を疑ってみるといいかもしれない。

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