手術を「受けない」「受ける」考え方…3度の狭心症と前立腺がんを経験した医師に聞いた
年を重ねれば持病がいくつかあるのは当たり前で、自分なりにどんな最期を迎えたいか考える人は少なくないだろう。医師で医療ジャーナリストの富家孝さんはこれまでに3度、狭心症で手術を受け、前立腺がんと糖尿病を患う。今年、喜寿を迎えるだけに、「そのときは穏やかに逝きたい」と語る。では、持病とどう向き合うのか。
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富家さんが胸に違和感を覚えたのは、2004年の57歳のときだった。朝起きると左胸が痛み、冷や汗が出た。医師だけに「心臓の血管に異変が起きたに違いない」と思い、すぐに心臓血管外科の名医・南淵明宏医師に連絡したという。
「心臓に酸素と栄養を送る冠動脈は3本あって、そのうちの1本が、案の定詰まって、血流が滞っていました。それで血管の内側から目張りして血流を再開するステント留置術を受けたのです」
それから8年後、再び激しい胸の痛みに襲われると、今度は閉塞部位の先に迂回路を設けるバイパス手術で一命を取り留めた。さらに、それから2年後は2度目のステント留置で九死に一生を得たという。
「私が医学生だったころは、心電図で狭心症を確認すると、冠動脈を広げる冠拡張剤を処方する治療しかできず、ステントもバイパス手術もありませんでしたから、こうした治療が登場する1990年代以前だったら助かりませんでした。しかも、南淵さんは年間200例の冠動脈手術をこなすエキスパート。そんな彼と知遇を得ていたことはラッキーだったと思います」