「気をつけ!」「敬礼!」ドアマン警備員のバイト研修で軍隊式訓練の驚愕
警備員編
というわけでドアマンのバイト面接に合格。ただし、ドアマンといっても、実際は都内の高級ブティックの出入り口に立つ警備員のような仕事だ。採用されたのも警備会社だった。
数日後、研修を受けることとなった。マンションを改装した事務所の小さな会議室に私を含めた4人が集められ、全員が着席する。
定刻になった。講師の加藤氏(仮名)が4人に向かって「はい、起立!」と掛け声をかける。声の調子が軍隊式なので戸惑ったが、他の3人はこうした研修に慣れているようで、さっと立ち上がる。
「敬礼!」──。加藤氏の指示に彼らは直立不動で頭を下げる。何だこれは? まるでドラマで見る警察の捜査会議ではないか。
講師の加藤氏は元警視庁の警察官で、この警備会社の顧問を務めている。そのため警察や軍隊の統率方法を採用しているわけだ。あとで聞いたら、3人とも警備員の経験者で、こうした軍隊式の研修に何の違和感も覚えないそうだ。
加藤氏はまず自分の職歴を語り、次に会議室の壁に掛けている警備指導員の免状を指し示して「私はこうした資格を得て研修の講師をしているわけです」と説明。その際、彼は右手に持った交通誘導灯(工事現場などで誘導員が持っている道具)で免状をボンボン叩いていく。少し乱暴だ。というより、これは一種の威嚇だと思う。シェパード犬の調教のように最初にガツンと上下関係をはっきりさせようという意図が見え見えだ。私はこうした姿勢を「支配的労務管理」と呼ぶことにした。