もし富士山が噴火したら…どう逃げればいい? 溶岩流噴出量は最大13億立方メートル!
1707年の「宝永噴火」を最後に約300年もの間、不気味な沈黙を続ける富士山。日本に111ある活火山のひとつであるが、地下深くでは今もマグマが活発な活動を続けている。いったん大爆発すれば被害総額は1.2兆~2.5兆円に上るとされ、富士山から100キロ離れた東京にも10センチの火山灰が積もり、都市機能が麻痺する予想だ。
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①どれくらいの溶岩流が街を襲うのか
最初の前兆は温泉の温度の上昇から。やがて大きな地震と共に火山が爆発し、火砕流が森と建物を次々とのみ込む──。1997年に公開された火山災害をテーマにした映画「ダンテズ・ピーク」の一場面だ。映画のモデルとなった火山は米ワシントン州にあるセントへレンズ山で、1980年に大爆発を起こした。セントへレンズ山は富士山に似た形状で、安山岩質溶岩と火砕岩からなる。
富士山もいつ噴火してもおかしくなく、2021年には「富士山ハザードマップ」、昨年は「避難基本計画」が改定されている。ハザードマップの大きな変更点は以下の通りだ。
・想定噴火口が従来の44カ所から252カ所に増加
・溶岩流の噴出量を最大7億立方メートルから13億立方メートルに修正
・溶岩流はこれまでの想定より早く、より遠くに到達する
・火砕流は北東と南西方向に到達エリアが拡大
噴火は山の頂上や稜線で発生するイメージが強いが、街の中心部で爆発が起きる可能性も指摘されているのだ。
さらに、噴出する溶岩量は864年の貞観噴火を参考に13億立方メートルに修正された。10キロ四方の土地13個分を高さ1メートルの溶岩が埋める量に匹敵する。貞観噴火はふもとの地形を変え、押し寄せた溶岩流が元は1つの湖だった精進湖と西湖を分断してしまったほどだ。
■太平洋クラブ御殿場には2時間で溶岩流が到着
②どの範囲が避難対象エリアになるのか
富士山を絶好の角度で仰ぎ見ながらプレーする太平洋クラブ御殿場コース。想定ではこの名門ゴルフコースに2時間で溶岩流が到着する。最終的に溶岩流は御殿場プレミアム・アウトレット付近までのみ込む。溶岩流の温度は1000~1200度、時速1~2キロ。歩いても逃げられる速さであり、パニックにならないことが肝心だ。
静岡県危機管理部の担当者がこう言う。
「溶岩流からは原則、徒歩で避難します。従来は車での避難でしたが、渋滞による逃げ遅れの懸念があり、シミュレーションで溶岩流が3時間以内に到達するエリアから離脱するのに“最大6時間以上”を要することがわかったからです。富士山頂は噴火前に避難しますが、市街地の避難については状況によります」
溶岩流の到達時間によって第1次~第6次の避難対象エリアが設定されており全エリアの推計人口は79万2257人(表参照)。これに多くの観光客と買い物客が加わる。
噴火口は現在の技術では特定できないことから、避難エリアはどこでも対応できるよう全方位となっている。したがって、静岡県側が大パニックになっていても、山梨県側は避難の必要がないケースも出てくる。ちなみに、貞観噴火は山梨県側に溶岩が流れた。