【独自】大満足の新作すいか「夕焼けセレブ」を収穫! 山梨・白州のすいかばか'24~究極のレシピを求めて#3
フルオープンのベンツで買いに来る女
すいか生産量全国47位、ごくごくレアな山梨県ですいか作りに情熱を注ぐ「寿風土(こどぶきふうど)ファーム」代表の小林栄一さん(58)さん。
彼のことを周囲は親しみとリスペクトの意を込めて、「すいかばか」と呼んでいる。すいかばかの“2024年夏の陣”を追う――。
7月中旬、富士山は雲の中にぼんやりと浮かびあがり、頂上は雲をかぶっていた。梅雨明け直前の白州は雲の隙間から少し青空が見え隠れし、都会よりだいぶマシだとはいえ、やや蒸し暑い朝だった。
20年前、小林さんが家の前に台を置いてすいかを売っていた頃の話。白いフルオープンのメルセデスベンツで乗り付けたサングラスにつば広の白い帽子をかぶった美しい女性が、「いつもの、頂戴」と車を降りずに買っていくようになったそうだ。
「今日もセレブが買いに来た!」
何の嫌味もなく、その優雅な物腰に、「今日もセレブが買いに来た!」と奥さんと話していたという。セレブが買いに来てくれるそのすいかを「名水セレブ」と名付けた。そして、すいかにこだわりのネーミングを付け始めたきっかけでもある。「セレブ」シリーズは思い入れの強さの塊なのだ。
【究極のレシピを求めて#1はこちら】⇒「寿風土ファーム」代表・小林栄一さんのある決意
緻密な計算によって作られる珠玉のすいか
販売が始まる時期、畑には大きくなったすいかがゴロゴロと転がっている。一度に収穫となると販売も発送もさばききれない。小林さんのすいかは、それぞれの品種が収穫期をずらし、順に仕上がるよう緻密な計算のもとに植えられている。
採らずに放置しようものなら強烈な陽に焼かれ、台無しになってしまう。すいかを採り過ぎないよう、そして傷めないよう、一玉一玉、様子を見ながら収穫する。
傍からは汗をかきかき、ひたすら作業しているように見えるが、すいかばかの頭の中は常にフル回転なのだ。
やることは山積している。すいかにまんべんなく陽が当たるよう、丁寧に向きを変える重要な作業も日が暮れる直前になった。
農家は実に大変な仕事だ。特に気候変動が顕著なこの頃は、さくらんぼなど全滅する作物が多いというニュースをよく耳にする。
生活が苦しくなるのは当然だが、苦労して手をかけたものが太陽に焦がされていくのを見るのは堪らない気持ちだろう。
期待の新作「夕焼けセレブ」の出来栄えは…
そんな厳しい状況の中、期待の「夕焼けセレブ」は濃厚な甘さとひと際豊富な水分の堪えられないうまさ。重圧と戦ってきたすいかばかを大いに満足させる出来だ。
夕焼けセレブ登場(写真:koji Takano/無断転載禁止)
目指した通りの仕上がりの夕焼けセレブを手に。これまでの苦労が実った瞬間(写真:koji Takano/無断転載禁止)
心底うまい
大きく口を開けてかぶりつく。「あ~うまいなァ…」と心底思う。今年の小林さんの苦労はすべて、人々が始めに口にするこの瞬間の為にあったのだと思う。
「夕焼けセレブ」のテーマ曲はセリーヌ・ディオン
今年のすいかを楽しみにする客から、問い合わせの電話が多くなる。そして、東京や県外から大勢の人がやってくる。
初めても、毎年の常連も、試食をして楽しげな笑い声や感嘆の声が聞こえてくる。
「ハイ! ちょっと待って。そのすいかを食べる時はこの音楽を聴きながらね!」
セリーヌ・ディオンのタイタニックのテーマ曲が流れてくる。珍しく演歌や歌謡曲ではないが、「夕焼けセレブ」のテーマ曲だ。
苦労やプレッシャーなどおくびにも出さない陽気なすいかばかに、笑ったりちょっと退いたり、人によって反応が違うが、うまいすいかを誰もが楽しんでいる。気候はいつもと違うが、いつものすいかばかの夏が始まった。
梅雨が明け、白州の夏がやって来た
夜テレビをつけると、梅雨明けのニュースが流れる。日陰で涼やかな風に吹かれる時の心地よさに白州に本格的な夏が来たのを感じた。
厳しい暑さの夏、人を元気にするすいかで乗り切れるはず。少し涼しい風とすいかばかの元気を求めて、白州を訪ねてみてはいかがだろうか。
「寿風土ファーム」
address:山梨県北杜市白州町台ヶ原615
(Koji Takano/フォトグラファー)