「ナスカの地上絵」新たに303点発見 山形大・坂井正人教授インタビュー「破壊のスピードは今世紀に入り加速している」
遺跡の保護と開発のバランスは議論すべき
──ナスカを走る高速道路もなくすべきでしょうか。
そうとは言い切れません。南北アメリカ大陸を縦断する「パンアメリカンハイウェイ」は、とても便利な道路です。いくら貴重な遺産の保護のためとはいえ、そこにいる人々の生活は無視できません。あくまで共存していくことが大切です。
──確かに。どう共存すべきでしょう。
立体モデル上でハイウェイ周辺の水の流れを分析した結果、水の流れを元に戻すための水路を敷設すれば被害を軽減できることが判明しました。現在はペルーの文化省と保護活動の方針を話し合っている段階です。遺跡の保護と開発のバランスは丁寧に議論を重ねて答えを出していくことが重要です。
──他にはどのような保護活動を行っていますか。
一例を紹介すると、ナスカ市街地から北に1キロほどの場所に、地上絵が70点ほど集中する地区を発見しました。ただ、すぐそばには農地や家屋、鉱山用の作業場などがあり、破壊されるリスクが高かったのです。直ちに保護が必要でしたが、文化省と特別協定を結んだおかげで、その区域を公園として整備することができました。このように、公園化や観光地化を進め、開発を制限することで、保護していくのが現実的ではないかと考えています。
──ペルーの人々も地上絵を保護したいと考えていますよね?
ペルーの硬貨には地上絵の絵柄が入っています。この事実が物語るように、地上絵を知らない人はおらず、彼らにとっても誇りです。決して地上絵に無関心なわけではありません。