ホタテ漁で栄華を極めた北海道猿払村は中国への輸出停止でどうなった?漁師はメディアに“警戒モード”
分かれる村人の明暗
漁師以外の村民は中国の輸出停止のあおりを体感しているのだろうか。農業従事者のひとりが言う。
「村の雰囲気はまったく変わりません。ただ、村がホタテを買い上げて、年初に村民全世帯へ無料で2キロずつ配ってくれました。改めて村とホタテ漁師の結びつきを感じましたね」
漁師たちはこれまで稼いできた「蓄え」があるだろうし、自治体による買い上げや、ふるさと納税による国内消費量の増加も相まって、ホタテ御殿は今なお“盤石”のようだ。
一方で、困っているのは加工業者だ。
「漁師は平気そうだけど、中国に販路を広げていたウチは大打撃です。売り上げは約40%減。ハッキリ言うと、政府と東電に恨みが募る。処理水を流すか流さないかで、昨年4月から振り回された。それなのに東電は、8月24日以降の損失しか補償しない方針だそう。しかも、具体的な金額の見積もりには『最低でも1年かかる』と伝えられています。この窮状を多くの人に知っていただきたい」
中国の輸出制限は高給取りの漁師たちよりもむしろ、一般村民に影響を与えているようだった。
(取材・文=杉田帆崇/日刊ゲンダイ)