TSMC工場進出で半導体バブルに沸く? 注目の熊本県菊陽町から聞こえたタメ息と狂騒
「“バブルに沸く町”と言われてもねぇ……」
こう嘆息するのは、台湾の世界最大手の半導体メーカー「TSMC」が進出した熊本県菊陽町の住民だ。菊陽町でTSMCの第1工場が開所したのは先月24日のこと。開所前から地元は「半導体バブルに沸いている」と報じられてきたが、評価は複雑なようで──。
熊本空港から北へ車で約20分。TSMCの製造子会社JASMの巨大工場とオフィス棟が見えてくる。本紙記者が訪れた3月初旬は、オフィス棟の目の前に広がるキャベツ畑が収穫の真っ最中で、キャベツ特有の青々とした匂いが鼻腔をくすぐる。ガラス張りのオフィス棟と巨大工場の存在感は何とも異様だった。
「工場は高台にあるから、最寄りのJR原水駅からもよく見えますよ。夜になると下からライトアップされて不夜城のよう」(地元住民)
TSMCが熊本に進出を決めて以来、地元は地価高騰や雇用創出、経済波及効果など「どのような恩恵があるか」という文脈で語られてきた。九州フィナンシャルグループの試算によると、工場建設に伴う経済効果は2022年からの10年で6兆8518億円(1兆4400億台湾元)に上る。「バブルに沸く町」と言われるのもうなずける。
しかし、住民は半導体バブルの熱狂を歓迎しつつ、冷静に受け止めている。
「工場の最寄り駅前は毎日の朝夕、工場へ出勤する人と、工場から帰る人で大混雑ですよ。でも、駅は無人だし、周りにお店があるわけじゃないから、基本的にスルーされます(笑)。駅の周りに新築の家がこれから100軒建つなんて話も出ていますが、人が増えて盛り上がるのはまだ先でしょう。この間、台湾の方がお見えになって『ここら辺に飲食店はないの?』と聞かれました。どうも観光に来た様子だったので、報道を見て菊陽町が『リトル台湾』のようになっていると思ったのかもしれません」(自営業を営む50代女性)