熟成バスクチーズケーキは「試作500回」 コロナ禍の巣ごもりが新ビジネスのアイデアに
ビースリー代表 田和充久さん(後編)
ビジネスのチャンスはどこに転がっているか分からないものだ。
とろける食感と濃厚な味わいが楽しめると評判の「熟成バスクチーズケーキ」。IT企業の社長でありながら、田和さんがチーズケーキ開発に乗り出したきっかけは、コロナ禍での苦境だった。
「もともと日本国内でのIT事業と並行して、東南アジアのタイで飲食店を展開していました。ところがコロナ禍で渡航が制限され、現地に行けなくなってしまったんです。このままでは事業が立ち行かなくなると危機感を覚えました」
そんな中で目をつけたのが巣ごもり需要が高まっていたお取り寄せグルメだ。外出自粛が続く中、自宅で少しでもぜいたくな時間を楽しみたいというニーズに応えようと、スイーツ作りを思い立った。
「当時はみんな笑顔が少なくなっていました。だったら、食べて笑顔になれるおいしいものを届けたい。それも、子供がアレルギー体質なので、グルテンフリーのものを作りたいと考えたんです。なぜスイーツを? それは自分が大好きだからです(笑)」
とはいえ、素人が最初からおいしいチーズケーキなど作れるはずがない。試しに作ってみたが、とても客に出せるレベルのものではなかった。そこで友人のパティシエから基本のレシピを教わることに。そこから作ってはやり直しの連続。果たして本当においしいものができるのか、暗中模索の日々が続いた。
「プロのようにたくさんの種類を作るのは無理。でも一つのものを突き詰めれば、素人なりのやり方でプロ以上のものが作れるかもしれない。そう考えて、徹底的に試作を重ねることにしたんです」