すべてが異様だった都知事選を総括・分析 悪夢のような結末は歴史の分岐点になる予感(上)
嘘とゴマカシ、醜聞まみれの百合子圧勝に心ある有権者の絶望
何から何まで異様だった都知事選は7日に投開票され、悪夢のような結末に終わった。
現職の小池百合子東京都知事(71=自民、公明、都ファ支援)が291万票を得て、3選。当初、一騎打ちとみられた蓮舫前参院議員(56=立憲民主、共産、社民支援)は128万票と伸びず、小池を追い詰めるどころか、石丸伸二前安芸高田市長(41)に逆転されるボロ負けだった。
この選挙結果にケチをつける気はないが、絶望的になってくるのは、この国の民主主義の危うさの方だ。小池は正々堂々と戦って勝ったわけではないのである。
公務を理由に政策論争から逃げ回り、噴出する疑惑への質問を封じるためにオンライン会見などで記者を制限、公開討論に応じたのも2回だけだった。その一方で、選挙直前の6月に低所得者層に1万円の商品券を配るなど、“買収まがい”のようなことをした。
そんな小池を自公は支援したが、裏での票固めに徹し、表には出ないように身を潜めた。つまり、まっとうな審判を避けるために、現職都知事が、ありとあらゆる策を弄し、民主主義の“当たり前”を踏みにじった選挙戦だったのである。
それなのに、フタを開ければ小池の圧勝、開票と同時に当確が出る「ゼロ打ち」だった。政治を真剣に考えている有権者ほど、この結末には暗澹たる気持ちになったのではないか。
「何から何まで異様な都知事選でしたね。国民から猛烈な批判を受けている与党が候補者を出せずに、小池氏にステルスで抱きついた。それなのに、野党は批判票を受け止められずに、無党派層は分断された。ネット社会の若者は石丸氏に流れ、マトモな政策論争もないまま、目立たない戦術に徹した小池氏が消去法の雪崩現象で圧勝した。56人もの候補者が出て、選挙を金儲けにしたり、面白がる風潮の中で、民主主義が流動化していく懸念を強く感じる選挙でした」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
改めて言うまでもないが、小池は学歴詐称など複数の疑惑で刑事告発されている。元側近は次々離反し、小池を「嘘つき」と断罪している。
「都民ファーストの会」元事務総長の小島敏郎氏は「嘘は良くない。検察は捜査に乗り出してほしい」と言い、エジプト留学時代に同居していた北原百代氏は「あなたは日本の法律に違反することをして、今の地位を築きました」と月刊誌で書いた。
小池は今後、検察から事情を聴かれることになるし、そうなれば、改めて自民党に接近し、国政への野望を抱く可能性も大いにある。
果たして小池は4年後も都知事をやっているのか。その時、都民が目覚めても遅いのだが。